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黒ウコンのメタボリック症候群に対する臨床効果


鷲野憲之(医食同源研究会)、篠田憲彦(鈴鹿医療大)、
山本肇(名市大院)、武内徹郎(医療法人 大樹会)

緒  言


黒ウコン(学名Kaempferia parviflora)は黒生姜とも称され、原産国タイではクラチャイダム(Krachai Dam)と呼ばれる生姜科の植物である。黒ウコンは通常のウコンと異なり、根茎切断面は鮮やかな紫色を呈し、アントシアニン、ポリフェノール、セレン、アミノ酸を豊富に含み、クルクミンをわずかに含み、強力な抗酸化作用を有することが特徴である。

ウコンは一般的に肝臓に良いといわれていますが、種類により効果や効能も異なり、黒ウコンは種々の抗酸化成分を含有することからダイエット、抗糖尿病、アンチエージング、滋養強壮、強精、抗疲労、美容、美肌、抗欝、抗ウイルス、消化器病改善などを目的として幅広く使用されているもので、医薬業界からも最も注目されている民間伝承薬用植物の1つである。

このように多岐に亘る作用が報告されているもの科学的報告、臨床的報告がほとんどないため、現代社会でもっとも注目されている生活習慣病、特にメタボリック症候群に着目し、どのようなメカニズムでダイエット効果をもたらすかについて、ヒト腹部CT撮影、臨床検査などを行うことによって、黒ウコンの作用の本質を探索研究することを目的とした。

今回使用した黒ウコンは沖縄で有機栽培に初めて成功したものを原料とし、薬効作用発現しやすいように、軽く遠赤外焙煎を行い、さらに微粉末化したナノパウダーをカプセル化したものである。3ヶ月の連続摂食試験結果、メタボリック症候群に有用であるという臨床結果が得られ、さらに保健機能として滋養強精、肝機能、冷え性など自他覚症状についても興味のある治験が得られたので報告する。

黒ウコンイメージ
沖縄黒ウコン有機栽培地   沖縄産黒ウコン根茎

黒ウコンの成分


根茎100gの含有成分および量
水分 62.0g
たんぱく質 3.9g
脂質 0.3g
灰分 1.8g
糖質 25.6g
食物繊維 6.4g
エネルギー 134kcal
ナトリウム 2.8mg
リン 118mg
3.93mg
カルシウム 43.5mg
カリウム 476mg
マグネシウム 107mg
セレン 11μg
総ビタミンC 2mg
ビタミンE 0.4mg
クルクミン 0.1mg
アントシアニジン 130mg
ポリフェノール 630mg
 
たんぱく質3.9g中のアミノ酸の量
アルギニン 670mg
リジン* 104mg
ヒスチジン* 73mg
フェニルアラニン* 98mg
チロシン 159mg
ロイシン* 201mg
イソロイシン* 106mg
メチオニン* 62mg
バリン* 131mg
グルタミン酸 287mg
アスパラギン酸 414mg
トリプトファン* 75mg
アラニン 95mg
グリシン 163mg
プロリン 99mg
セリン 110mg
スレオニン* 126mg
シスチン 71mg
(*:必須アミノ酸)
日本食品分析センター分析値(平成20年6月)

方  法


対象




試験食品


服用法

試験項目



試験期間

試験機関
試験機関通院患者でメタボリック症候群と判定され、摂食前3ヶ月体重減少がほとんど認められなかった男性14名(33〜77(歳平均年齢56.4歳)女性6名(22〜66歳平均年齢46.8歳)の計20名(事前に医薬品の臨床試験と同様にインフォームド・コンセント実施)に対し、試験を行った。

黒ウコンナノパウダー含有サプリメント
(黒ウコンとして1日摂取量 600mg)  (株式会社アイアール社提供)

1回1粒、1日3回水または温湯で摂食し、臨床試験を行った。

体重、腹囲、血糖、血清脂質のChl,TG,LDL,HDL)、 CTによる内臓脂肪、皮下脂肪、肝機能GOT,GPT、体温、血清テストステロン(男性のみ)、便、眼の症状などを評価項目として服用開始前後の測定値を比較評価した。

3ヶ月連続摂食

国立三重病院、武内病院、遠山病院、白山クリニック、明合クリニック

ウコンの種類


  春ウコン 秋ウコン 紫ウコン
根茎・断面 春ウコン 秋ウコン 紫ウコン
学名 Curcuma aromatica Salisbury Curcuma domestica Valeton Curcuma zedoaria Roscoe
本草名 薑黄 (キョウオウ) 鬱金 (ウコン) 蓬莪朮 (ガジュツ)
原産地 インド 熱帯アジア インド・マレーシア
クルクミン含有量 約0.4% 約3.6% 0%
効能 ・健胃作用
・肝臓、心臓、腎臓、
  膵臓、肺に効果あり
・肝機能の改善
・美肌効果、抗酸化作用
・アルツハイマー予防効果
・健胃作用
・殺菌効果
・ダイエット効果
図1.腹囲・体重・BMI・血糖に対する効果
図1
図2.血糖脂質の変動
図2
図3.皮下脂肪・内臓脂肪のX 線CT解析
図3
       図4                           図5
図4 5
図6.肝機能
図6

結 果


黒ウコンナノパウダー含有サプリメントの臨床評価(n=20)をダイエットに関する項目および、関連項目について摂食前と摂食3ヵ月後で評価した。

1. 腹囲 94.8 ±2.0cmから91.9 ±2.0cmと3%減少、体重 75.4 ±2.0Kgから72.8 ± 3.1Kgと3.5%減少、 BMI27.51 ± 0.91から26.48 ± 0.88と3.7%減少、血糖値 110.9 ±9.7mg/dlから108.4 ±7.8mg/dlと減 少したが有意なものでは なかった。

2. Chl 18.7%、TG 37.8%、LDL 27.8%といずれも有意(図2)に減少したことが示された。   HDLは若干増加傾向をしめしたが、有意差は認められなかった。

3. 内臓脂肪面積は11.7%、皮下脂肪面積は8.4%といずれも有意(図3)に減少したことが示された。

4. GOTは 28% と有意(図6)に減少したが、GPTは減少傾向を示したが有意な変動は認められなかった。

5. その他の項目として血清テストステロン血清テストステロン値は男性(n=14)の場合であるが29.1%と有意   (図4)に上昇したことが示された。

6. 体温は36.11±0.07℃から36.25 ±0.05℃と有意(図5)に上昇したことが示された。

7.  他の症状改善として、眼の症状について20例中6例が物が見やすくなったと訴え、便通改善は7例見られた。また便通改善に伴って便臭が軽度になったものが3例見られた。その他、副作用と思われる自覚症状、他覚症状は認められなかった。また、摂食するようになってから、お酒に強くなった、二日酔いしなくなったという症例が4例認められた。さらに、体が温かくなった、冷え性を感じなくなったと自覚した症例は8例に上った。

考 察


黒ウコンは本来日本の植物でなく、沖縄で有機栽培に初めて成功したもので、通常のウコンに黒糖を混ぜたものとはアントシアニンに基づく色及び、風味で根本的に判別できものである。黒ウコンの肝機能作用発現しやすいように、軽く遠赤外焙煎を行い、風味向上させ、さらに超微粉末化したナノパウダーをカプセル化したものについて、我々は既にマウスで抗酸化作用、急性肝障害に対する効果、安全性試験を実施し、効果、安全性について確認した素材である(未発表) 。

今回の試験で、血糖値は有意差を認めなかったが、糖尿病薬などによって、血糖は比較的コントロールされるが、脂質は コントロールされにくいことを示しているからと思われる。便秘解消された便通改善例が比較的多く認められたのは、胆汁酸 などとして脂質の再吸収を抑制し、腸内に排泄されたため、便も柔らかくなり、糞便排泄量が増加したためと考えられる。 我々は 日本薬学会127年会、128年会で食物繊維の多い大麦若葉の抗メタボリック作用を胆汁酸の再吸収抑制作用本体を、 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の総合作用であると結論付けたが、黒ウコンの食物繊維は大麦若葉に比較すると 1/10程度の6.4%しか含まれていない。 従って黒ウコンを特徴付けるほど、豊富に含まれるアントシアニンがアディポネクチンを 増加させ、脂質代謝改善をもたらすこと、及び、黒ウコン投与動物の体重は減少させるが、血清テストステロンを増加させると いわれていることなどから考えると、蛋白同化促進因子でもあるテストステロンがいわば、贅肉を筋肉化させ、引き締まった 体にしてくれることから血清脂質、内臓脂肪が減少し、腹囲、体重も減少してくれたものと思われる。

このような脂質代謝促進および、黒ウコンの他のポリフェノール、セレンなどの抗酸化物質及び、食物繊維、ミネラル、アミ ノ酸などが複合的に作用して、眼も見やすくなり、便臭も低減させ、肝機能改善、テストステロンも増加したものと考えられ る。さらに、黒ウコンは生姜成分も含むことから体を温め、滋養強壮、美容・美肌効果、疲労回復、欝症状改善などにも効果 が期待されるものと考えられる。

以上のように、ダイエット効果が主作用のようであるが、体を温め、抗酸化物質を多く含むことから、免疫力が上がり、体の 抵抗力が高まることも考えられる。今回のように抗メタボリック症候群に対する効果が認められた黒ウコンはこれからますま す、高齢化社会に向かう健康生活に真に貢献してくれる素材になると考えられる。  さらに、今回の効能効果及び、伝承効 果について、どのような成分が薬効の作用機序に深く関与しているか、また、他の作用があるか否かについても未解明な点 が多い興味深い素材であるため今後、鋭意解明していきたいと考える。

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